雪国ラプソディー
「わあああ、もうっ、見ないでください!」
ボロボロの顔を隠そうと両腕を動かすと、ふわりと懐かしい小林さんのにおいに包まれて固まった。まるで後ろから抱き締められているようだ、なんて思ってしまう私は、もしかしたら少しばかり欲求不満なのだろうか。
「探したんだからな」
避難めいた言い方をされたけれど、披露宴前に言われた〝また後で〟が社交辞令ではなかったことがとんでもなく嬉しい。嬉しいけれどとてつもなく不安だ。
未だ覚めやらない披露宴の感動とこの得体の知れない気持ちが混ざってしまい、またぽろりと涙が出る。
「あ、浅見……」
私がまた泣き出したせいで、隣から焦ったような声がする。
(こんなはずじゃなかったのに、どうして)
アルコールが、どこか心の中の大事なネジでも外してしまったのかもしれない。さっきから小林さんに迷惑をかけてばかりだと、ぼんやりと思った。