冷徹上司は大家さん!?
 きっと混んでいる電車に乗っていたら、何も言わなくても埋もれないように気遣ってくれるんだろうな。


 私が浅野課長に人ごみからかばってもらっているのは、メイクを観察させてあげるっていう交換条件のもと。

 その他に特別な理由があるわけじゃない。

 私は浅野課長にとって「隣人であり部下」以外の何者でもないんだから、それは当たり前。

 別に自分自身が必要とされているわけじゃないんだ、と考えたらなぜか胸がちくりと痛んだ。
 

 だめだめ、こんなふうにぼんやり悩んでたらまた仕事中にミスを連発してしまいそう。



 気を取り直して顔を上げると、いつものことながらものすごい近距離で私の顔を見つめている浅野課長と目が合った。
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