冷徹上司は大家さん!?
 そこで朝比奈さんの電話が鳴り、彼女は「ごめんね、また」と言って自分のデスクに戻って行った。

 小走りで去っていく彼女の背中を見つめながら、今さっきの出来事を繰り返し回想する。

 入社したての頃からずっとお世話になっていた朝比奈さんに祝福してもらって初めて「本当に商品企画課に行けることが決まったんだ」と実感できた。


 そっか、浅野課長もこのことを知っていたから今朝ニヤニヤしていたんだ。

 私の異動を考えるにあたって、商品企画課をまとめる浅野課長ももちろん話し合いに参加したはず。

 浅野課長が認めてくれたうえでの、商品企画課への異動。

 そう考えてみると、なんだかすごく嬉しい。

 ずっと夢だった商品企画課への異動。


 やっと実感がわいてきた喜びを噛みしめていると、私のデスクの上の電話が鳴った。
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