冷徹上司は大家さん!?
「ん~、疲れたぁ」


 大きく伸びをしながら電車を降りて、新しいアパートまでの道を歩く。

 今日は小さいミスを連発してしまった。

 まず、取引先に渡した資料に載せてあった、うちの会社の電話番号が間違っていたこと。

 次に、新商品の説明をするときに噛みまくって笑われてしまったこと。


 それから……朝、浅野課長の足を踏んでしまったのも痛恨のミスだった。

 別に怒られたわけでもないけど、上司が目を合わせてくれないのって社員として認められてないみたいで地味に辛い。


 もともと商品企画の仕事がしたくてこの会社を目指していたから、そこで責任者をしている浅野課長は憧れの存在。

 だけど、ああいう人がかわいい化粧品を企画しようと頑張っているところって全然想像できないな。


 とにかく、次の打ち合わせではしっかり新商品の説明ができるように準備しておかなきゃ!

 私も営業で結果を出して、ゆくゆくは商品企画課で仕事をしたいもん。


「よし、がんばろ!」


 せっかく恋愛お休み期間って決めたんだから、仕事も家事もスキルアップしたい。

 まずは大家さんに挨拶して、この辺のことを聞いてみなきゃ。

 私はこれから始まる新しい生活に少し緊張しつつ、同時にうきうきしながら急ぎ足で家路についた。
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