冷徹上司は大家さん!?
「わぁ、すごい……!」


 小ぎれいなリビングに置かれたダイニングテーブルの上には、お釜に入った炊き込みご飯と根菜の煮物、それからサバの干物とお吸い物が所狭しと並んでいた。

 お吸い物には梅の形のお麩が浮いている。

 な、なんだろう、この女子力の高さは。いや、これはもはや女子力なんて甘ったるいもんじゃない。主婦力とでも言うべきレベル……。


「冷めないうちに食おう。頂きます」

「は、はい! 頂きます」


 私も浅野課長と同じように手を合わせて箸を手に取った。なんだか、こんなにきちんと頂きますをするなんて学校の給食みたい。

 とりあえず、手前に置かれているお吸い物に口をつけてみた。


「え……美味しい!」


 なんだろう、よくわからないけどダシが効いていているみたい。

 お母さんが作る、市販の素を使ったお吸い物とは全然違う。


 筍がたくさん入った炊き込みご飯も、箸をほんの少し入れただけで崩れるくらい柔らかい煮物も、ふっくら脂がのったサバも、全部すごく美味しい。

 どの料理もシンプルなのに、焼き加減や煮込み加減が絶妙だ。


 こんなに美味しい料理を少しでも冷ましてしまうのがもったいなくて、夢中で箸を進める。
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