冷徹上司は大家さん!?
 ふと斜め前から視線を感じて顔を上げると、浅野課長が箸を止めてこっちをじっと見つめていた。


「お前……」

「す、すみません! 夢中になってがっついて……」

「いや、そうじゃなくて。すげぇ美味そうに食うんだな」


 そう言って課長は眼鏡の奥の目を細めた。


 え、笑った? 会社では人と目を合わせることさえしないあの浅野課長が?

 私は箸を動かすのも忘れて課長の顔をぽかんと見つめた。


「ん、何? 俺の顔、なんかついてる?」

「あ、いえ、なんでもないです!」


 私は即座に下を向いてもう半分のサバを食べ始めた。


 ちらっと上目遣いで浅野課長を見ると、いつものポーカーフェイスでお吸い物を啜っている。

 やっぱり見間違いかな? 私は入社してもうすぐ丸2年たつけど、会社で浅野課長の笑顔を見たことは一度もない。

 直属の部下の陽菜でさえ、彼が笑っているのを見たことはないと言っていた。


 それから、気になることがもう一つある。
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