冷徹上司は大家さん!?
 私、永原一花は社内恋愛禁止の会社で働いている。理由はずばり、恋愛に疲れてしまったから。

 こんなことを24歳のうら若き女子が言っているなんて、我ながらどうかしていると思う。

 でも学生時代の交際経験で、本当に私の恋愛モチベーションは枯れきってしまった。


「一花って、別に俺がいなくても大丈夫そうだよね」


 それが、歴代彼氏に言われてきた言葉。

 どうやら私は一人上手な人間らしく、デートの予定が急になくなってしまっても、一人で映画館やカフェに行って満足してしまう。

 連絡をマメにとるのも苦手で、メールの返事は基本的に「了解!」とか、一言だけ。

 友達が毎日彼氏と2時間電話している、という話にびっくりして「お酒飲んでだらだらする時間はどうやって作るの!?」と聞いたら逆にあきれ返されてしまった。

 もちろん、今までお付き合いしてきた人のことはちゃんと好きだったし、このままこの人と結婚できたらいいな、なんて人並みに乙女チックな感情を抱いたこともある。

 でも、束縛とか嫉妬とか、恋愛の面倒くさくてままならない側面にぶつかると逃げてしまうし、そういう困難に苦しんでまで恋愛したいかと言われれば、そうでもない。

 彼氏と出かけるのも楽しいけど、一人でいる時間は絶対キープしておきたい。

 その考えを素直に伝えると、


「一花とはちょっと合わないかな」


 というセリフとともにお別れ。それがお決まりの恋愛パターンだった。
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