冷徹上司は大家さん!?
「……」


 浅野課長と話す内容が、見つからない。

 どうしよう、さっきはあまりにもお腹が空いてたから何も考えてなかったけど、気まずい……!


「もうこの辺は歩いてみたのか?」

 浅野課長がお吸い物から顔を上げて聞いた。

 そうだ、この辺のことを聞いてみるんだった。膨らみそうな話題を見つけて思わずほっとする。


「いえ、まだです。自炊したいんですけど、おすすめのスーパーとかありますか?」

「ここから歩いて五分のところに安くて品揃えいい店があるよ」

「本当ですか。じゃあ明日さっそく行ってみます」

「一緒に行く?」


 え?


「そこ、道が入り組んでてわかりにくいんだよ。多分初めてだと迷う」

「でもグールルマップとか見ながら行けばいいんじゃ……」

「いや、あまりにも入り組んでるからグールルマップの案内も間違ってる」

「なんと……」


 ただでさえ方向音痴な私には、そんな複雑な道を地図なしで歩く勇気はない。

 どうしようか考えていると課長が口を開いた。
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