冷徹上司は大家さん！？

　えっと、私は明日浅野課長にスーパーまで案内してもらう予定になってるんだよね。

　でも、彼が言うには、入居者みんなの面倒を見るほど優しいわけじゃない。優しくするのは、近づきたい人だけ。

　つまり……？


「え、えっ？」


　いや、そんなわけない。浅野課長とまともに話したのは今日が初めてなんだから。

　私は自分にそう言い聞かせて、彼の発言から導き出した答えをかき消そうとした。

　まさか、浅野課長が私のことを……なんて。


「ないない、絶対ない！」


　すぐ隣の自分の部屋に急いで駆け込み、ドアを閉める。

　忘れようとすればするほど、何度も思い出してしまう彼の言葉。


「どうしよう……」


　思わず手で顔を覆ってドアにもたれかかり、そのままずるずると座り込む。

　恋愛お休み期間中で、社内恋愛禁止の会社に勤めている私。


　引っ越し早々、波乱の新生活の幕開けです……。