冷徹上司は大家さん!?
「ゆ、揺れますね」

「だな。まあ、俺には好都合だけど」


 小声でそう言われるやいなや、ぐっと腰を引き寄せられた。


「ちょ、ちょっと! やめてくださ……」

「動かないで。ちょっと目閉じて」


 そう言った浅野課長の真剣な眼差しには、なぜか抵抗できない力がある。

 やっぱり昨日言ってた「近づきたい奴」って、私のこと恋愛対象として見てるってことだったの?

 今、目を閉じたら何されるの? 無期限の恋愛お休みを誓った私の決意はどうなっちゃうの?


 そんなことを考えている間も浅野課長の視線は私を捉えて離さない。

 突き刺さるような視線を受け止める余力がなくなった私は諦めて、ぎゅっと目を閉じた。


「……うん。やっぱりアイシャドウのグラデーション綺麗だな。使ってるのはうちの商品か?」




「……はい?」
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