冷徹上司は大家さん!?
「な、なんなの……?」


 のろのろと電車を降り、ホームで立ちすくむ。

 つまり、浅野課長は私のメイクをよく見るために体を引き寄せたってこと?


 じゃあ……私のことを恋愛対象として見てるっていうのはまったくの思い違い?


「何それ……」


 一瞬でも「キスされる」なんて勘違いをした自分が恥ずかしくて、私は両手で顔を覆った。


 それにしても、浅野課長のあの食い入るような目。

 あそこまで真剣な目でメイクを分析する男性は、生まれて初めて見た。

 しかもさっそく商品の改善提案を作ることを決めるなんて、行動が早すぎる。


「あれが商品企画課長の本性か……」


 私はまだ目が覚めないような気分のまま、会社へ向かった。
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