冷徹上司は大家さん!?
「ね、浅野課長って女性社員のメイクをチェックしたりするの?」

「まさか。今時そんなことしたらセクハラで訴えられるよ」

「た、たしかに」

「それに、浅野課長は誰とも目を合わせないことで有名だからね。誰かに興味をもつことなんてあるのかなぁ」

「やっぱそうだよね……」

「なにー、浅野課長のこと気になるの?」

「もう、そういうのじゃないよ! ほら、始業の時間だから帰って帰って」


 始業まであと三分という時間を指した時計を見て、私は明菜を追い帰した。


 ああ、昨日悩んで眠れなかったのが馬鹿みたい。


 まさか、自分を好いてるんじゃないかと思った相手が、メイクを観察したいだけだったなんて。

 とにかく、今日は浅野課長にスーパーまで案内してもらう予定だから、なるべく早く仕事を片づけないと。



 私は頭を軽く振り払ってデスクに座り、資料の準備を始めた。
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