冷徹上司は大家さん!?
「お疲れ様です、お待たせしてすみません」

「いや、大丈夫。行こうか」


 並んでアパートの廊下を歩き、階段を降りる。


「いつもこの時間に買い物行ってるんですか?」

「大体そう。平日は毎日会社だし、土日は試作品作ってるから」

「試作品?」

「料理教室のレシピ」

「ああ、なるほど」


 相槌を打ちながら、意外にも浅野課長と普通に会話できていることに驚く。


 そういえば、私はその料理教室目当てでこのアパートに引っ越してきたんだった。


「永原は料理、得意?」

「いや、あんまり……。だから、料理教室でいろいろ教えてほしいんです」

「そっか。次、今週の土曜だから空いてたらさっそく来て」

「はい!」


 浅野課長の素性はよくわからないけど、料理教室は純粋に楽しみ。


 少し曲がりくねった道を歩き続けると、都内にしては珍しく駐車場が50台分はありそうな、大きいスーパーにたどり着いた。
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