冷徹上司は大家さん!?
「永原さん、すみません。お待たせしました」

「いえ、とんでもないです。楽しみで、昼休み始まる前にこっそり出てきちゃいました」

「ははは。一応店を予約してあるんで、行きましょう」


 そう言われてついていってみると、そこはこの前雑誌で紹介されていたイタリアンレストランだった。

 窓際の席に案内され、上品なアンティーク調の椅子に座る。


 ほどなくして、生ハムとモッツァレラチーズの前菜と、グラス入りのジンジャーエールが運ばれてきた。


「じゃあ、新商品の売れ行きに乾杯」

「乾杯」


 そう言ってカチンとグラスを合わせる。


「いや、本当は一杯飲みたいところなんだけど、まだ仕事が山積みですからね」

「あはは、そうですね。昼間からこんなおしゃれなところに連れてきて頂いて、罰が当たりそうです」

「たしかに。まあ、この店を予約したのはお祝いのためだけじゃないんだけどね」

「え?」


 瀬尾さんはグラスをテーブルに置くと、少し身を乗り出して私を正面から見据えた。
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