冷徹上司は大家さん!?
 あれから毎日浅野課長と同じ電車に乗っているけれど、私はその状況をけっこう楽しんでいた。

 浅野課長は熱心に私と一緒の電車に乗り続けているけど、彼が関心を惹かれているのは私のメイクだけ。

 だからこそ男の人として意識せず話せるし、軽口を叩くこともできる。


「はい、じっとしてて」


 リビングの床に置かれたクッションの上に座らされ、真向かいに浅野課長がしゃがみこむ。


「お前これどんな寝相してたらこうなるんだ」

「失礼な! ちゃんと起きて着替えてたらこうなったんです」

「いや、そっちのが問題だろ」


 毎朝浅野課長と過ごしていて、気づいたことが3つある。

 まず1つ目に、彼は超がつくほどの化粧品馬鹿だということ。

 初めて電車に乗った日につけていたアイシャドウこそ外れていたけれど、それ以外の私が使っている化粧品はすべて当てている。

 毎日使っている他社のビューラーまで特定してきたのにはびっくりした。
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