冷徹上司は大家さん!?
「あ、永原。この水切った食器拭いてくれる?」


 浅野課長に言われ、私は布巾でお皿を拭き始めた。

 ちらっと理沙さんの様子を伺ってみるけど、こっちを気にするそぶりはなさそうだ。

 むしろ、私が浅野課長の横に立ったのにはまったく気づかず、隣にいる拓海さんと楽しそうに話している。


「どうした、疲れたか?」


 私が少し離れた理沙さんたちのほうをぼーっと眺めていると、浅野課長が声をかけてきた。


「あ、いえ、なんでもないです。浅野課長、本当に料理上手なんですね」

「子どもの頃からやらされてたからな。うち、共働きで家に両親がいないことが多くて」


 水切りが終わった食器を私に話しながら、そう話す。

 浅野課長自身の話を聞くのは初めてで、なんだか新鮮。
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