冷徹上司は大家さん！？

「化粧品会社に入ったのは、何がきっかけなんですか？」

「うーん……」
　

　眉をひそめ、難しそうな顔をして考える浅野課長。


「内緒」

「えーっ！　気になります」

「永原が教えてくれたら俺も教えるよ」

「む……」


　そう言われると悩むけど、浅野課長がなぜあれほどまでに化粧品作りに熱中できるのか、その理由を知りたい。


「私は……メイクって、限りなく魔法に近いと思うから。自分もそんな、ぱっと気分が明るくなる化粧品を作りたいなって思ったんです……あの、今まで彼氏に振られたりして落ち込んだ時もお気に入りの化粧品に元気もらってきたから」


　あー、言葉がまとまらない。


　「魔法」なんて夢見がちな表現、絶対失笑される……。

　しかも、彼氏に振られて落ち込んだ、なんて余計なことまで口走ってしまった。