冷徹上司は大家さん!?
 明菜は納得したような顔でそうつぶやいた。

 たしかに、いつも「恋愛が毎日のエネルギー源」と力説する明菜なら、会議室だってなんだって利用して彼氏に会いに行くところが想像できる。


 もしも、私がそういう状況に置かれたら……。

 なんとなく想像してみると、脳内で相手役に当てはめられたのはなぜか浅野課長だった。


「いやいや、ちょっと待って!」

「え、いきなりひとりごと言い出してどうしたの? 一花」

「ごめん、なんでもない。ちょっとお腹空いて、いつもの発作が……」

「お腹空いて発作起こすってどんな病気……?」

「あ、あははっ」


 落ち着け、私。今のは違うから。

 社内の人を相手役に当てはめようとしたら、一番手近なのが浅野課長だっただけだから。

 ただそれだけ。だから妄想終了! 解散!


 私はありったけの脳細胞にそう呼びかけて、もし自分が社内恋愛することになったら……なんていう妄想をストップした。
< 73 / 301 >

この作品をシェア

pagetop