冷徹上司は大家さん!?
「早く準備しないと、私不器用なので作り終わらないうちに日が暮れちゃいます」

「それは困るな……」

「はい。さっそくご指導よろしくお願いします」

「了解。まな板と包丁はそのシンクの下の扉の中にある」

「ありがとうございます!」


 しゃがんで扉を開けながら、頭の中を整理した。

 まさか、本当に彼女と一緒に住んでいたなんて。

 なんだかその先を聞くのは気が引けて、浅野課長の言葉を遮ってしまったけれど。

 そっか、そうだったのか。


 途端にこの部屋に置いてあるすべてのものが生々しく見えてきて、少し息苦しさを感じた。


「まな板、見つかった?」

「あ、はい!」


 私は気を取り直してまな板と包丁を探し出し、キッチンに並べた。
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