冷徹上司は大家さん!?
「永原、それ、かき混ぜすぎて泡立ってる」

「うわ、すみません!」


 いろいろ想像しながら卵をほぐしていたら、いつの間にか卵が泡立つくらい力強くかき混ぜてしまっていた。


「まあ、混ざってることは混ざってるしよしとしよう。フライパン、火にかけて」

「はい」


 私はときほぐした卵をフライパンに流し込み、コンロの火をつけた。


「ふう、なんとかここまできた。……永原って本当に料理苦手なんだな」


 浅野課長は少し呆れたような顔をして、切れ長の目をこっちに向けた。


「ははは……すみません……」

「でも、不器用なわけじゃないよな。化粧品の使い方は丁寧だし」

「毎朝商品企画課長に観察される、って思ったらそりゃ丁寧にやらなきゃって思いますよ」

「まあ、そうかもな」
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