リアル
帰り際、シロの姿が見当たらなくなった。
「いなくなっちゃった……もう会えないのに」
ふたりで展望台の周りを探しても、その姿は見つからない。
「――あ……!」
その声に驚いて振り向くと、森川さんが指さすずいぶん向こうを、シロが歩いていた。
あたしたちに背を向けて、こちらを見向きもしない。
「シロ!」
さっきつけた名を呼ぶと、シロは一瞬だけ振り向いた。
しかしそのまま、また向こうへ歩いていく。
「頭がいい犬なんだよ、きっと」
「え……?」
「おれたちが帰るって気配がしたから――もうこっちに寄ってこないんだよ」
小さくなっていく真っ白な姿を、あたしは何も言えずにずっと見つめていた。
それが、誰かの姿に重なって見えて――あたしは胸が苦しくなってしまった。
「……行こうか」
森川さんも、少しだけ寂しそうにつぶやいた。
すぐ横の駐車場に戻り、助手席に乗り込もうとしたとき、
くうん、と、胸が痛くなる声が、耳の奥に小さく響いた。
「いなくなっちゃった……もう会えないのに」
ふたりで展望台の周りを探しても、その姿は見つからない。
「――あ……!」
その声に驚いて振り向くと、森川さんが指さすずいぶん向こうを、シロが歩いていた。
あたしたちに背を向けて、こちらを見向きもしない。
「シロ!」
さっきつけた名を呼ぶと、シロは一瞬だけ振り向いた。
しかしそのまま、また向こうへ歩いていく。
「頭がいい犬なんだよ、きっと」
「え……?」
「おれたちが帰るって気配がしたから――もうこっちに寄ってこないんだよ」
小さくなっていく真っ白な姿を、あたしは何も言えずにずっと見つめていた。
それが、誰かの姿に重なって見えて――あたしは胸が苦しくなってしまった。
「……行こうか」
森川さんも、少しだけ寂しそうにつぶやいた。
すぐ横の駐車場に戻り、助手席に乗り込もうとしたとき、
くうん、と、胸が痛くなる声が、耳の奥に小さく響いた。