リアル
「……どうしたんですか……?」


「いや……」


まだ少し濡れたままの肌に、吸い寄せられるように――あたしは動けなくなった。

久しぶりに会えた喜びと、ようやく抱きしめてもらえた嬉しさのほうが、なによりも勝っていた。


「リュウから昨日聞いた。この前、部室で薫がずっとおれを待ってた、って話」


ずっと、ではなかったのだが……リュウくんが余計なことを言ってないか、急に不安になった。


「寂しそうにしてた、って聞いたから――昨日メールしたのに、返事こなかったから……怒ってるのかと思って」


「あ……」


すっかり忘れていた。

森川さんを待ち伏せしていた間、“いつも通り”の返事を考えて、

結局、あの時はなにも知らないフリができそうになかったから、返信をしていなかったのだ。


「薫、いつもはすぐメール返してくれるから……しかも今朝も電話出ねぇし」


あたしのことを気にしててくれたのだと、胸の奥が熱くなって――でも今まで溜め込んでいた不安とも、戦っていた。




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