リアル
「ごめんなさい、昨日ちょっと忙しくて、メール返すの忘れてました」


「マジで怒ってるのかと思った」


「ごめんなさい……怒ってなんかないです……」


またぎゅっと抱きしめられて、ほのかに香るシャンプーと、水のにおいで――頭がくらくらする。

その香りに酔っていると、カイ先輩はあたしの腰に手を回し、そのままあたしの身体を横抱きにした。


「――!?」


どさっ、と下ろされたのは、もちろんベッドの上。

なにがなんだかわからないまま、あたしは、ゆっくりとカイ先輩が覆いかぶさってくる光景を見ていた。


静かにくちびるが重なって――徐々に、キスは熱を帯びていく。


「…………っ」


ふたりの吐息だけが、音のない部屋に響いている。


もういよいよ頭が、感覚が麻痺して――あたしはなにも考えられなくなりそうだった。





「ねえ……薫。したい……」





耳元でささやかれた言葉は、なにを?、と聞くまでもなく――わかっていた。

しかしあたしは、その声を振り払うように、両手を顔の前に伸ばしてしまっていた。




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