リアル
夕日に染まった部屋が、なみだでにじんでいる。

乱れた息と乱れた服のまま、あたしはカイ先輩の背中に頬をくっつけた。


「泣くなよ……泣くほど怖かったのかよ」


「ごめんなさい……っ」


「もう謝んなって。おれが悪かったよ」


カイ先輩はあたしのほうを向き直り、真正面からあたしを強く抱きしめた。

激しく脈打つカイ先輩の胸に抱かれて、あたしはいつもの頭痛に耐えていた。



ほんとは違うの。

怖くて泣いたんじゃない――


ほんとは、
結局サユリさんに勝てない自分が、
カイ先輩の心から、サユリさんを消すことが出来なかったことが、

つらくて、情けなくて――なみだが止まらなくなった。




「な、ほら、あとでプリン買ってきてやるから」


どうしてカイ先輩は、あたしの好きなもの憶えててくれるの?

どうしてカイ先輩は――あたしに優しくするの?



頬を伝うなみだは、カイ先輩の熱い肌に吸い込まれていった。

あたしは顔を伏せたまま――もう大丈夫、と小さくうなずいてみせた。




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