リアル
「彼に電話ですべてを話したあと、無意識のうちに別れたい、なんて言葉が出たとき――わたしはとても取り返しのつかないことをしてしまった、と思いました……

ほんとは、会いたい、って言いたかったのに……今すぐ会いに来てって言うつもりだったのに」


暖房の効いた店の中で、あたしの身体だけがどんどん冷たくなっていくのを感じていた。

真夏の炎天下の中にいるように口の中がカラカラで、あたしは思わずカップに手を伸ばしたけれど――指が震えて、うまく持てなかった。


どうにか両手でカップを持ち上げて、そっと口をつけた。

味のない、生温かい液体が、申し訳程度に喉を潤して、胃に落ちていく。



「薫ちゃんに、こんなこと言うのは非常識だし、筋違いだってことはわかってます……でも、わたしはやっぱり、今でもカイのことが好きなんです」





少なからず覚悟していたとはいえ、鈍器で頭を殴られたような衝撃に――

あたしはなにも、言うことが出来なくなった。




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