リアル
しかし、台風が直撃しつつある街は、どこも早々と店じまいをして静まりかえっている。

ワイパーが間に合わなくなるくらい、雨もひどくて視界が悪い。


ようやく開いているマックを見つけ、ドライブスルーに駆けこんだ。

お金を出そうとすると、運転席から先輩の左手が、それを遮った。


「おれのおごり。薫に、ちょっとグチを聞いてもらいたいから」


先輩はまた寂しそうに笑った。









うちの近くのコンビニの駐車場に車を停め、マックの袋を広げた。

部室でふたりきりの時とは違い、車内という狭い密室に――あたしの心は妙な緊張をおぼえていた。


「グチを聞いてくれる人が欲しかったの。巻き込んでごめんね」


あたしは首を横に大きく振った。

先輩が今にも泣いてしまいそうな気がして、あたしは何も言えなかった。


フロントガラスに叩きつける雨は轟音を伴い、普段うるさいと文句を言っているカイ先輩の車のマフラー音さえも、かき消してしまう。

ただ、沈黙の時間だけが流れていた。




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