リアル
男同士って、女が考えてる以上に単純なのかな。

あたしにはそれがうらやましかった。


「ねぇ、カイ先輩とまた、昔みたいに戻れないかな?」


そんな寂しさから出てしまった言葉に、自分でも少しびっくりしてしまった。


「付き合う前の、仲がよかった先輩と後輩の関係に――」


あたしがこんなこと言ったって、きっとリュウくんは返答に困ってる。

でも、勝手に喋りだした自分の中の寂しさを、止めることが出来なかった。


「もうね、あたしのこと見てほしい、なんて贅沢なんて言わないの。ただ、そばにいられるだけで……」


森川さんが、“リュウじゃ相談相手にならないでしょ”と言っていたことを今さら思い出した。

またきっと、兄貴なんかやめとけって説教されるだろうなあ。


「……中林」


それに、他人にこんな愚痴をこぼしたのは初めてだ。

向かいに座るリュウくんの顔を見るのがなんだか怖くて、あたしは窓の外ばかりを眺めていた。




< 231 / 254 >

この作品をシェア

pagetop