リアル
本日、わたくし中林薫は、普段お世話になっている幡悠大学モータースポーツ同好会の夏休み恒例企画、草刈り大会に参加していたのです。


「中林、大丈夫?」


カイ先輩と入れ違うように、部室にリュウくんが入ってきた。


「あ、リュウくん……ごめんね、迷惑かけて」


リュウくんはなんにも言わずに、あたしの寝てるソファを素通りして、奥のラックをあさりだした。


「兄貴がさ、もう今日は帰っていいよ、って」


「でも、みんなまだ草刈りやってるんでしょ?わたしだけ帰るなんて……」


「いいんじゃない?部員じゃないんだから気にしなくて。それにもう5時くらいには終わるみたいだし」


そう言われて、壁掛けの時計を見上げると――もうすでに4時をすぎている。

昼休みのあと、たぶん1時間くらいは頑張ってたはずなのに……ずいぶん長く寝かされていたらしい。


「ま、みんなはこのあと打ち上げするみたいだけど」


リュウくんは、お兄さんとおんなじ笑い方で――にやりと微笑んだ。





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