リアル
無反応に近い態度に、あたしは少しがっかりしながら、その背中を見つめていた。

ところが、また彼が振り返って、


「ごめん、こっちまで持ってきてくれない?」


おそらく対のタイヤを指さしながら、そう言った。


「……あ、はい!」


今までにない反応に、あたしはびっくりして、慌ててタイヤを森川さんの車のほうへと転がした。


「あ、違う。タオルのことだったんだけど……」


「……あ……すみません……」


改めて指をさされたのは、あたしの腕にあるタオル。

まさかの勘違いに、あたしは泣きそうになりながら、肩を落としてタイヤを元の場所に戻そうとした。


「いいよ。こっちにちょうだい」


そんなあたしが可笑しかったのか、森川さんは口の端を少しだけ、上にあげて笑った。

あたしに笑いかけてくれた(――いや、きっと本人はそんなつもりはなかっただろうけど)ことに驚いて、あたしは無言のまま首だけ大きく縦に振った。




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