リアル
よく見ると、森川さんの車には、これでもかってぐらいタイヤが積んである。


「走行会……行くんですか?」


恐る恐る聞いた。

トランクの中に、あたしから受け取ったタイヤを無理やり押し込みながら、森川さんはうなずいた。


「――うん。明後日」


今まで一年半も、近づけなかった森川さんとの間で、会話のキャッチボールが成立していることに、あたしは感動していた。


「準備、早いんですね。明後日なのに……」


「寸前でバタバタするのが嫌だから」


そういえば確かに、部室の中に掛けられたカレンダーに、明後日の日曜にマルがしてあった。


「お一人ですか?」


「いや、カイ先輩と、2台で」


「どちらまで?」


「××。いつものとこだよ」


近辺にはサーキットがなく、一番近いところでも片道4時間はかかってしまう。

それよりもっと遠くなると、行くだけで半日以上かけなければならないので、モ会のみんなは専らそのサーキットを利用している。


「――カイさんに……誘われなかった?」


森川さんは意外なことを言った。




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