リアル
「中林さんとリュウを誘う、って――カイさん言ってたから」
“中林さん”という、聞き慣れない声が……なんだか恥ずかしくて、あたしはうつむいた。
「そういえば……リュウくんは、そんなこと言ってた気がします。でも、カイ先輩から直接は聞いてません」
「――そう」
それっきり、森川さんは自分の車の整備にとりかかってしまった。
しかし、気まずい沈黙も、今までとは違い、不思議と心地のよいものに感じられる気がした。
逃げ出したくなるような緊張には襲われなくなった。
「高橋が来たら教えて」
ふと、森川さんが静かにつぶやいた。
「おれ……5限が休講だったの、知らなくて。30分、誰もいない教室で授業始まるの、待ってた」
一瞬だけ、ぽかん、となって、その姿を想像したあたしは――思わず吹き出してしまった。
「高橋のヤツ、同じ授業受けてるのに……休講だって教えてくれなかったから」
笑いをこらえきれずに肩を震わせるあたしをよそに、森川さんは黙々とエンジンルームの整備をしている。
なんだか今日は――とっても幸せな気分になれた一日だった。
“中林さん”という、聞き慣れない声が……なんだか恥ずかしくて、あたしはうつむいた。
「そういえば……リュウくんは、そんなこと言ってた気がします。でも、カイ先輩から直接は聞いてません」
「――そう」
それっきり、森川さんは自分の車の整備にとりかかってしまった。
しかし、気まずい沈黙も、今までとは違い、不思議と心地のよいものに感じられる気がした。
逃げ出したくなるような緊張には襲われなくなった。
「高橋が来たら教えて」
ふと、森川さんが静かにつぶやいた。
「おれ……5限が休講だったの、知らなくて。30分、誰もいない教室で授業始まるの、待ってた」
一瞬だけ、ぽかん、となって、その姿を想像したあたしは――思わず吹き出してしまった。
「高橋のヤツ、同じ授業受けてるのに……休講だって教えてくれなかったから」
笑いをこらえきれずに肩を震わせるあたしをよそに、森川さんは黙々とエンジンルームの整備をしている。
なんだか今日は――とっても幸せな気分になれた一日だった。