リアル
「あ、ああ……」


なんだかどきっとして、あたしは曖昧にうなずいた。


「おれが森川さんの助手席に乗せてもらうからさ。中林も兄貴の車のほうが、気を遣わなくていいんじゃない?」


つい30分前までのあたしなら……リュウくんの申し出に、心から感謝していたに違いない。

でも今となっては――森川さんの車に乗りたい気持ちのほうが強くなっていた。


それは森川さんという人を、ちょっぴり理解できたということと、でもそれよりも、

もうこれ以上、カイ先輩への思いを強めてはいけない、という危機感が――あたしの胸のほとんどを占めていた。


「うん……ありがと、でも……」


「あ、森川さん!」


リュウくんの気遣いを断ろうとしたところで、タイミング悪く、森川さんがプレハブ部室から出てきてしまった。


「明後日の走行会、おれを乗せていってくれませんか?兄貴が中林を乗せていくんで」


「――うん。狭くていいなら」


「ありがとうございます!じゃ、お願いしますね」




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