リアル
「うまいですね……」


手際よくクレープの生地を焼いていく森川さんの手元をのぞきこんだ。

みんなが家から持ち出してきた3台のホットプレートから、甘い香ばしいかおりがする。

見事に3枚の皮をほぼ同時に焼きあげ、生クリームを盛り付けた。


「お待たせしました」


3人の可愛らしい小さな女の子たちが、とびっきりの笑顔で帰っていく。


「森川さん……料理、得意そうですね」


「そうかな?まあ中林さんよりはうまいと思うけど」


痛いところをつかれて、あたしはぐぅと口ごもった。


「でも……あたし、お菓子作りは得意なんです!こう見えて」


どん、と胸をたたいて笑ってみせたが、森川さんはもうすでにあたしの隣にはいなかった。

またクレープを焼く台の前に立ち、生地を焼き始めている。


お客さんかな?と思っていたら、あたしの目の前に焼きたてのクレープが差し出された。


「ちなみにおれ、お菓子作りは苦手なの。今度……中林さんのケーキを楽しみにしとくよ」


不敵な笑みとは裏腹に――森川さんが焼いてくれたクレープはびっくりするほど美味しかった。




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