リアル
「あたしも行きたい……」


無意識のうちに出てしまっていた心の声に、一番驚いたのはあたしだ。

慌てて左手で口をふさいで、おずおずとカイ先輩のほうを向く。


――“おまえも来いよ”


たぶん、あたしは心のどっかで、そんなカイ先輩の言葉を期待してたんだと思う。


「――だめだ」


しかしそんな淡い期待は、無惨にも打ち砕かれた。


「女子禁制。参加していいのは、オンナがいない男子だけだ」


思いがけない言葉に、あたしはちょっとばかり(ほんとはかなり)しょんぼりしてしまった。

普段はあたしのこと――男の子みたいな扱いをするくせに。


そんなあたしをちらりと見ただけで、カイ先輩はそのまま続けた。


「男だけで飲みたい夜もあるんだよ。ましてやそれが、恋人たちの聖なる夜となれば……」


カイさんは、うっ、うっ、と、なみだを拭う仕草をした。

男の子って――女以上に、難しくって繊細な生き物なのかも。


あたしはしみじみ思いながら、大人しくカイ先輩の言葉に従うことにした。




< 81 / 254 >

この作品をシェア

pagetop