リアル
でも――ほんとは少し、森川さんの顔を見れたことが嬉しかった。


「今日……学校忙しいって……」


学校忙しい、って、言ってませんでしたっけ?

まさか会えると思ってませんでした!



思わず口元がほころび、そう言おうとしたあたしの言葉を――森川さんが遮った。


「――お土産、誰のですか?」


まるで、あたしの存在に気づいていないかのように。


「部長から。企業見学で県外まで行ったんだとよ」


「ほう。おれも来年、行こうと思うんですよね」


「やっぱ行ったほうが勉強になるらしいぞ。おれも来年行かないとなあ」


あたしのほうなんて見向きもしない森川さんの様子に、あたしは呆気にとられていた。

どうして……あたしに何も言ってくれないんだろう――……












「あ、」


ようやく森川さんが、あたしの顔をはっきりと見た。

不安になっていたあたしは、森川さんの目を、きっとすがるように見ていたと思う。




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