大好きと言わせて!
パン屋に駆け足で入り、フランスパンを片手に店を出る。
家にジャムがあったか、気になったけど、今はそれどころじゃなかった。
早歩きで店を出る。
だんだん家へと向かうスピードが早くなる。
たぶん嫌な予感は、、いや絶対に当たっていると思う。
たった、たった、たったったった、
逃げなきゃ。
「はっはっは、、はっ、、」
あともう少し。
あともう少しで家……。
私が、玄関のドアノブに手をかけた瞬間。
ばん!!!
「ひゃっ!!!」
目の前にある、玄関は目の前にあるのに。
後ろから扉を押さえつけている男さえいなければ
私は、家に帰れたのに。
逃げれたのに。
「おい。なんで逃げる。はぁっ」
後ろから私を囲うように、逃がさないように囲う手が、今は何故か鬱陶しく感じてしまう。
吐息のかかる距離。こんな距離、
「はぁっ、、あと、何で一回も電話でねぇんだよバカ!」
私の肩に頭をおいて、走ってきたのか、とても苦しそうな息をしている大次さんに少しだけドキッとしてしまう。
「急にさけんな、なつき。」
なつき……?
一瞬息が止まる。
名前で初めて呼ばれた。
「…めて。」
ダメだよ。泣いちゃダメだよ。
やめて。
「やめてよ…。ずるい!ずるいよ!!いつも、大次さんはずるいです!!!」
逃げれっこないじゃん。
だって私、こんなにも大次さんから拒まれるのが怖くて逃げてるのに、やっぱり会っちゃうと、好きが止まらないんだもん。
名前呼ばれただけでこんなにも、許しちゃって、こんなにもまた期待しちゃって
大次さんの言葉すべてに、ときめいてる自分が苦しい。
もういや。
「大次さんが好きで苦しい。もう、見たくないのに、、期待したくないのに」
そう。もう、会わなかったら忘れられると思ったのに。
そういったとたん、扉についていた手が、扉から離れ、私の体を包み込んだ。
「っえ?!お、大次さん?!」