SECRET COCKTAIL
「うん。大丈夫だよ。確か途中まで同じ方向だったよね」
以前話をした時に、そんな会話になった気がする。
私の言葉に、松川君は緊張を解いたように頷いて、私の横に並ぶ。
二人で校舎の外に足を踏み出した。
遠くで、部活をしている生徒の声が聞こえる。
「今日は?部活ないの?」
「ああ、先週末試合があったから、今日は丁度部活が休みだったんだ」
隣に立つ背の高い彼は、私を見下ろすようにしてそう答えた。
「凄いよね。陸上部のエースだもん」
「いや、そんな事ないよ」
彼は少し照れたようにはにかんだ。
でも、松川君が陸上部のエースだという事は本当で。
大きな大会がある度に、何かしら賞を取って表彰されているのを知っている。
同級生で凄い人がいるんだな、って思ってはいたけれど。
話す機会もなかったし、クールな印象のせいか話しかけづらい雰囲気を感じていたのに。
実際話してみれば、とても気さくで話しやすくて、すぐ打ち解ける事ができた。