SECRET COCKTAIL
「そういえば、帰り道そっちだよね」
松川君の話したい事を聞く前に、いつの間にか分かれ道に着いてしまった事に気付いてそう言えば。
彼は少し考えるような仕草をしてから。
「いや、木戸さんの家まで送るよ」
とそんな事を言い出した。
「え?いいよ。まだ明るいし、それにもうすぐ着くし」
「それでも、送らせてほしいんだ」
なんだか切羽詰まったような声で松川君が言うから。
私は良く分からないままに頷いて、再び足を踏み出した。
で、結局。
具体的な話もないまま家に着いてしまって。
「送ってくれてありがとう」
と、松川君の正面に立って、彼の瞳を覗き込んだ。