SECRET COCKTAIL
「私」
思い切って顔を上げると、咄嗟に松川君が手を上げて私が続けようとしていた言葉を制してしまった。
「お願いだから、今じゃなくて、もう少し考えてから返事をくれないかな?」
「でも」
きっと、それでも。
私が告げる言葉は変わらないのだと、気付いてしまったのに。
「頼むよ。数日でいい。俺の事を考えてくれる時間があるんだって思わせてくれないかな」
私の態度に察するものがあったんだろう。
松川君は少し寂しそうに笑うから、彼の言葉に頷くしかなかった。
その後、少し松川君と話していたのだと思うけど、内容は良く覚えていない。
気が付くと、「じゃあ、また」と言って帰っていく松川君の背中を見送っていた。