SECRET COCKTAIL
「雅君は?どうなの?お兄ちゃんと遊んでばっかりだと、彼女に愛想尽かされちゃうよ」
「ばーか。俺は信用あるから、大丈夫なんだよ」
「へぇ、凄い自信じゃーん」
無理矢理明るくしてないと、泣いてしまいそうだった。
雅君には、大学に入学してから付き合っている彼女がいるって、出会ってすぐに知っていた。
今まで何気なくしていた会話なのに、自分の気持ちを自覚した途端に、こんなに胸が痛むなんて知らなかった。
黙っていると、すぐに涙腺が緩んでしまいそうで、ポケットの中でぎゅっと拳を握っていた。
お願いだから。
こんな私に気が付かないで。
私は、必死に平静を装って、無理矢理笑顔を浮かべていた。
「ほら、入るぞ」
「・・・はい」
いつものように、くしゃりと髪を撫でられて、胸の奥がぎゅっと痛くなった。
こんなに、恋が痛いなんて知らなかった。
もっと、甘くて、きゅんとして、舞い上がっちゃう位ふわふわした物だと思っていた。
松川君のような人と恋をしたら。
もいかしたら、そんな恋愛が出来たのかもしれないのに。