SECRET COCKTAIL
『どういう事って、そのままだろ。大学辞めるって事だよ』
『辞めるって、あと一年で卒業だろっ。それなのに、雅弥、なんで』
なんで。
お兄ちゃんの動揺が、私にまで伝わってきて、指先が震えた。
自分の息を殺すのが精一杯だった。
だって、教師になりたいって。
教える事が面白いって。
確かに、そう言っていたのに。
『親父が、死んだんだ』
静かに放たれたその声は。
私の頭を、心を凍り付かせるには十分なものだった。
たぶん、雅君を問い詰めた、お兄ちゃん自身すらも。