SECRET COCKTAIL


自分の部屋に戻った時。

頭の中が真っ白だった。



どうやって部屋に戻って来たかも覚えていない。



扉に背を預けて、ずるずると座り込む。


両手が小刻みに震えていた。





あの後、雅君が話した内容は、衝撃的な物だった。



『俺の親父の店、地元で結構人気があってさ。近々二号店を出す予定があったんだ』



絶句しているお兄ちゃんの傍で淡々と話を続ける雅君は、なんだか異様にも感じた。



『新しい店舗も決まって、その店の改修も始まったってお袋から聞いてた。そんな時だったんだよ、親父が倒れたのは』



以前入院したと言っていた時、実は脳出血ですでに意識不明の重体だったそうだ。



『結局、意識が戻らないままだった。俺らは、何もできなかったよ。看病すらできなかったんだ』

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