SECRET COCKTAIL



静かに話を続ける雅君の声は、震える事もなく。


すでに固い決意を抱いて。


全て悟ったような。


どこか他人の事を話しているような声だった。




そして。


葬儀やその他の事務処理が終わって、やっと一息ついた時。


共同出資者になるはずだった人が、店のお金を持ち逃げして姿をくらました事に気が付いた。




残ったのは、改修途中の店と多額の借金、自宅のローン。



それは、お父さんの生命保険とお母さんのパート代だけでは到底賄えない額で。



『弟は何も知らなくていい。何も諦めなくていい。このまま進学してほしいんだ』



そのために。


大切な家族を守るために。




大学を辞めて知り合いに紹介された場所で働く事を決めたという。

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