SECRET COCKTAIL
それから一度だけ、私はあの店の前で雅君を見かけた事がある。
二度と会いに来るなと言われた事は忘れていない。
会いに行った訳ではなく。
大学の飲み会の後に集団で歩いていた時、気が付いたら偶然お店の前を通りかかっていた。
「ミヤビー、またねぇ」
鼻にかかった甘ったるい女の人の声が聞こえて、つい足を止めてしまった。
綺麗な女の人と、もつれるように店内から出て来る男の人を見つけて、胸が痛い位に鼓動を早めた。
髪の色が違ったって、髪型が違ったって。
私が間違う訳がない。
あれは、雅君だ。