SECRET COCKTAIL
ここは定休日の決まっていないお店だけど、よっぽどの事がない限り金曜日はお店を休む事はないし。
雅君が、昔なじみのお客さんの誘いに乗って出かけるような事は、今までなかった。
だけど。
「いや、大丈夫。彩芽さんのためなら、何日だって空けるよ」
あっさり肯定する雅君の声が、心なしか甘さを含んで聞こえて、なんだか泣きたくなった。
「嬉しい。車で迎えに来るわ」
「いや、俺が迎えに行く。一日彩芽さんに付き合うから」
「ありがとう。じゃあ、そうしてもらおうかしら」
二人に漂う大人びた雰囲気は、簡単に立ち入る事の出来ない物のように感じられた。
今更ショックを受ける必要なんてないのに。
私の想いが一方通行だって事は、もう分かり切っているし。
私が雅君にとって、恋愛対象外だって事も知っている。
それでもやはり、私の胸はぎゅっと握りつぶされたかのように痛かった。