SECRET COCKTAIL
screwdriver
「お疲れ、木戸(キド)。なぁ、帰り飯食ってかねぇ?」
「馬鹿ね。多田(タダ)。美來を誘うだけ無駄よ」
仕事終わりに同期の多田知基(トモキ)君に声を掛けられたけれど、同期で一番仲の良い新堂希海(シンドウノゾミ)がすかさずそれを遮った。
「なんでだよ」
「美來にはねぇ、大事な用事があるのよ」
不満げに希海に視線を向ける多田君の肩をなだめるように軽く叩いて、彼女はやや呆れたような表情を浮かべて私を見た。
私は、と言えば。
今日はいつもより仕事が長引いてしまったから、急いで帰り支度をしながら二人のやり取りを聞いていた。
「なんなら多田さん、私がご一緒しましょうか?」
「冗談。俺は彼氏持ちを誘うつもりはねぇよ」
「あら、私だって本気で言ってないわよ」
冗談めかした二人のやり取りはいつもの事だ。
つられてくすくすと笑みを漏らして、私は仕事道具が入った重い鞄を持ち上げた。