SECRET COCKTAIL
それなのに。
「いや、大丈夫だよ。そのためには、外堀も埋めておかなくちゃ」
なんて、訳の分からない事を言う。
まぁ、多田君がいいならいいんだけど。
カツ、と目の前にカクテルが置かれて、ビアグラスが交換される。
いつもは、次を飲むか確認されるのに、今日はそれもなかった。
多分多田君が来たから、当然まだいるのだろうと思っての事なのだろう。
まるでカフェラテのような色のショートカクテル。
問うように視線を上げると。
「ベルベット・ハンマー」
と視線も返してくれずに無表情で雅君が答える。
久しぶりにクリーム系のカクテルが飲みたいと思っていたから、嬉しくて頬が緩んだ。