SECRET COCKTAIL
「ごめんね、多田君。誘ってくれてありがと。また今度ね。じゃあ、希海、また明日っ」
「はいはーい」
「ちょっ、木戸、待てよっ」
二人の声を背中に受けながら、会社を飛び出した。
早く会いたい、と気持ちが逸る。
疲れている身体をものともせず、すでに陽が落ちて暗くなった街並みをやや駆け足で歩いた。
夜の街に映えるネオンの波を抜けながら、いつも通りの道を辿る。
行き交う人達は、帰路へ着く人々やすでにアルコールを帯びて上機嫌になったサラリーマンまで様々だ。
それだけで、今日の帰宅がいつもより遅い時間だという事を肌で感じる。
目指す場所はもちろん、Bar Kir。