SECRET COCKTAIL


身体の力が抜けて。

もう何もする気が起きず。


ひんやりとする銅板の扉に背を預けたまま、膝を抱えてしゃがみこんでいた。




どの位時間が経っていたのだろう。




ふと気付くと、視線の先に誰かの靴が見えて、ハッと視線を上げた。


「どうしたの?」


一瞬、雅君が来たのかと期待した自分に、いい加減呆れてしまう。

聞きなれた声は、簡単にその期待を打ち破る。


「多田、君」


「こんな所に座って何やってんだよ」


「な、なんでもないよ」


慌てて立ち上がったのに、足がしびれてまともに立てなくてカクンと身体のバランスを崩した。

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