SECRET COCKTAIL
何が起きているのか分からなかった。
バランスを失った身体が、そのまま目の前の温もりに包まれる。
咄嗟に離れようと反射的に身体を動かしたけれど、気が付いた時にはぎゅっと抱きしめられていた。
「多田君?」
「木戸がいるからだよ」
「え?」
「木戸がいるって知ってたから、この店に来てた。だから、他の所じゃ意味がないんだ」
「え、ちょっ、どういう」
多田君の言っている意味が分からなくて狼狽えている私に。
「俺、好きな人がいるって言ったろ?」
突然耳元で、そんな事を聞いてくる。
耳元で聞こえる多田君の声が、いつもの声音と違って聞こえて自然と胸が高鳴った。